予定表に何もない1週間。にわかに思い立って関西へ。
【4月9日 京都】 京都から嵯峨野に向かう電車は満員、8割がたは外国人旅行者と見た。清凉寺特別公開(本堂:国宝清凉寺式釈迦如来立像、霊宝館:同阿弥陀三尊像 ほか)。大覚寺、誰もいない部屋で般若心経を写経した。大澤の池から太秦へ歩く。愛用のお香を買いに三十三間堂に行く。木屋町のいつもの酒亭はなんとお休み!途方に暮れて初めての店は,...ありゃ、失敗。とほほの夜。とぼとぼ31000歩。
こんなカラフルな花ニラ、初めて見た 大澤池から太秦へ
【4月10日 奈良へ斑鳩】朝、出発まで宿に近い東本願寺と渉成園。法隆寺の修学旅行の行列はいつものこと、それにしても今日は見たこともないほどの大軍にたじろいで退散した。金堂も夢殿もあきらめて春期公開中の大宝蔵院だけ入館したら幸運にもここはシーンと厳かな空気。中宮寺で弥勒さん(寺伝如意輪観音)に模刻の御礼参りのご挨拶をする。蓮華の畦道を法輪寺、法起寺へ。秋はコスモスだけど今はビニールハウスのイチゴの甘い香りが漂ってくる。春爛漫の37000歩。

法起寺付近
【4月11日 西ノ京から桜井】きょうは悪天の予報。駅から遠いところはやめておこうと思う。まずは西大寺駅から喜光寺へ。垂仁天皇陵の脇を通り唐招提寺。案外天気が持ちそうな気配に、路線変更して桜井へ。コンビニでおにぎり買ってバスに乗り、聖林寺の国宝十一面観音に会いに行く。本堂は本尊の大きなお地蔵さんの脇に隠れるように控えめに座っておられる阿弥陀如来が意外といい。帰りはバスに乗らずに結局そのまま大神神社まで歩いてしまった。三輪そうめんをハシゴする。それにしても、あの店この店、嗚呼、なんでこんなに腰抜けになるまで茹でてしまうのだろう。せっかくのおいしい三輪そうめんさまがなんてもったいない。と嘆きつつ、それでも三輪に来るたびにそうめん屋さんに入らないと気が済まないのはなぜ? けっきょく雨もほとんど降らず、今日も歩いた39000歩。
山の辺の道の南端、平等寺、その昔、聖林寺の十一面さんはここにいたのか? 廃仏毀釈の嵐の跡
歩き疲れたから銭湯に立ち寄ることにする(奈良市高畑 扇湯)
【4月12日 宇陀・室生寺~吉祥龍穴、今井町】室生寺の金堂外陣公開。おちょぼ口が可愛らしい国宝・十一面観音さまに会いたくて。春の早かった今年、山門辺りはもうシャクナゲが咲いている。さすがに金堂から上、奥ノ院周辺はまだ堅い蕾。対面する十一面さんは、あの可愛らしさのなかに、しかしどこか思いつめたような深い悲しみをも湛えている気もする。ところで室生寺といえば写真家の土門拳さんのことを思い出さずにいられない。何年か前、門前の橋本屋でうどんをすすっていた時、ふと目を上げると、店の前を大きなカメラと三脚を担いだ初老の男性が寺に向かって足早に歩いていた。えっ?あの姿、風貌、あまりにも似ている。似過ぎてないか。そんな馬鹿な? でもいまでもぼくは半ば信じている。あれは土門さんの幽霊だったと。何に導かれてか、きょうも歩いた32000歩。
暮れなずむ今井町の街並み。町内の路地裏をタテヨコ全探検
【4月13日 湖東・観音の里】琵琶湖畔の長浜周辺は、観音の里と言うとおり素晴らしい観音さまがおられる。なかでも高月・向源寺の十一面観音立像は、日本にある6体の国宝十一面観音像の中でも最も美しい最高傑作ともいわれている。同感だ。仏像を彫りはじめた最初に、彫ってみたいと思ったのがこの観音さまだった。いや、もっと正確に言うならば、この観音さまを見たときにはじめて、仏像を彫りたいという想いが、頭だか心だかに浮かんだのだった。きょうはせっかくだから向源寺以外の観音さまも何カ所か回れるところを回ってみようと思い、駅前の案内所で情報をいただきながら自転車を借りて行った。(この辺りはふらりと行ってその場で仏像を参拝できるお寺はほとんどない。)正妙寺には面白い観音さまがいる。千手千足観音(下の写真)。昨年だったか一昨年だったか東京芸大に来た時にいちど拝見している。千の眼を持つ千手千眼観音は多いけど、足が千本というのはここだけだそうだ。もっと素早く、もっと多くの人々を、救いに行けるようにということらしい。向源寺も、正妙寺も、きょう回ったほかのお寺も、琵琶湖のお寺のほとんどは無住。地域の人々が交代でお寺を管理し参拝者への対応、案内をしてくれているのだ。どこもみんな親切でほんとうに心温まる思いもする。この日、あるお寺では「この強風のなか自転車では大変だ」と言って軽トラックに自転車を積んで次のお寺までぼくを運んでくれさえした。ありがとうございます! おかげさまできょうは少なめ?の23000歩でした。
千手千足観音(正妙寺のパンフレット)